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トップの『ブランディング』への覚悟が成長を加速させる ー社員の行動変容と組織変革をいかに実現するかー【全国知識製造業会議2026ダイジェスト】
2026.05.21
会社を未来に向けてシフトさせるには、社員の行動変容を促進し、組織を変革していくことが必要不可欠です。そして、その第一歩となるのが「トップが自らビジョンを構想すること」です。本記事では、全国知識製造業会議2026で実施されたパネルセッション「トップの『ブランディング』への覚悟が成長を加速させるー社員の行動変容と組織変革をいかに実現するかー」(セッションパートナー:株式会社エンビジョン)のダイジェストをお届けします。当事者として組織変革を牽引してきた経営トップと、社外パートナーとして数々の企業ブランディングを担ってきた専門家。これら2つの立場から、「新時代のブランディング」について展開された濃密な議論の模様をぜひご覧ください。
大きな誤解。ブランディングとは「ロゴをつくること」ではない
藏本 このセッションでは、一般的なブランディングのイメージとは違う話をしたいと思います。新しいロゴをつくるとか、短期的キャンペーンや会社の認知度を上げるといった広告・マーケティング的な話ではなく、サブタイトルに掲げている「社員の行動変容と組織変革をいかに実現するか」。これこそがブランディングを正しく理解する鍵であるという仮説のもとでディスカッションを進めていきます。まずは1910年創業のファミリー企業の4代目として変革を牽引してきた小橋さんから、「何をどう変えてきたのか」という観点で自己紹介をお願いします。
small bridge 岡山を拠点に農業機械の製造開発やモノづくり支援事業を行っているKOBASHI HOLDINGSの小橋と申します。私は2008年に、KOBASHIグループの中核企業である小橋工業に入社しました。当初から「アトツギとしてグループを盛り上げたい」と思っていたのと同時に、日本の人口減少や農家の高齢化といった構造的な課題を前に、「これまでとは違うことをやっていかなければ」という強い危機感を持っていました。
社長に就任したのは2016年、34歳の時です。その3年後に、まさにこのセッションのタイトルの通りに覚悟を決めた瞬間がありました。新たな経営理念として「地球を耕す」という言葉を掲げたのです。これは従来の経営理念である「農家の手作業を機械に置き換える」を否定するものではありません。これまで我々は農地を耕してきたが、これからは地球全体を耕していこう。つまり、これまでやってきたことを再定義するという位置付けでした。

Mr. Shojiro Kobashi, President and Representative Director, KOBASHI HOLDINGS Co.
1982年岡山県生まれ。1910年の創業以来、農業機械メーカーとして、農業の機械化を推進。2017年KOBASHIグループ再編によりKOBASHI HOLDINGS株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。「地球を耕す」を理念に掲げ、100年以上にわたって培ってきた知識や技術を応用し、地球規模の課題解決に取り組む。また、2020年KOBASHI ROBOTICS株式会社を設立し、スタートアップのモノづくりを包括的に支援する「Manufacturing Booster」を開始。地球上の課題を解決する技術の一日でも早い社会実装を目指す。 https://www.kobashiholdings.com/
藏本 経営理念の再定義を起点として、会社の新しいあり方をつくっていくプロセスを構築されたわけですね。企業ブランディングに伴走するプロとして、藤巻さんの目にはどのように映りますか。
藤巻 エンビジョンの藤巻と申します。小橋さんと平岡さんという稀有な経営者のお二人と経営とブランディングについて対話できる機会を大変、光栄に思います。本日はよろしくお願いいたします。実はブランディングという概念には学者や専門家、経営者などによって様々な定義や考え方があって、必ずしも一つの共通認識が存在するわけではありません。置かれた外部環境や競争のポジション、業界などによって、その捉え方もさまざまであり、ゆえにブランディングへの理解の違いや誤解も散見されます。エンビジョンでは「経営=ブランディング」という捉え方をしています。その意味では、自社の歴史から「らしさ」の鉱脈を見出して、その価値を時代の変化に合わせて再定義した小橋さんの取り組みは、まさにブランディングそのものだと感じました。

Isao Fujimaki, COO and CBO, Envision Inc.
大学院修了後、国内大手広告代理店等でプランナーとしてキャリアを積む。その後、世界最大のブランドコンサルティングファームであるインターブランドジャパンの戦略ディレクターとして、B2Bを中心にグローバルを含む多種多様な業界・領域における大規模なプロジェクトをリード。その後、楽天グループのブランディング統括、KPMGコンサルティングでのブランディング・マーケティング組織の統括を経て、2024年よりエンビジョンに参画。社会変革を加速させる日本発のブランド創出、社会課題を解決するクリエイティブ開発、ブランディングの民主化の実践を通して、より良い社会に変えていくことに邁進している。社会人向けエグゼクティブプログラム 京都クリエイティブ・アッサンブラージュ修了。 https://envision-inc.jp/
藏本 ありがとうございます。後ほど詳しく議論していきましょう。では続いて、平岡さんからも自己紹介をお願いします。
平岡 BIPROGY(旧:日本ユニシス)の社長を2016年から8年間務めたのちに、現在は顧問を務めている平岡です。私は社長になる前の専務時代から「会社を変えたい」と考えていました。日本ユニシスは業種としてはシステムインテグレーターで、いわゆる「1人頭月いくら」の人月ビジネスで成長を遂げてきたのですが、その形態を続けていては早晩行き詰まってしまうという危機感があったのです。
そこで、人月ビジネスから脱却して顧客に新しい価値を提供できる会社になるべく「Foresight in sight」という新たなコーポレートメッセージを策定し、中期経営計画の中核に位置付けました。この一連の策定プロセスで、当時インターブランドジャパンにいらっしゃった藤巻さんとご一緒しました。さらに社員に外へ目を向けてもらうために「ビジネスエコシステム」という概念も打ち出しました。当時は「エコシステムとは環境事業のことですか?」と言われるくらい、まだまだ社会的にも馴染みのない言葉でしたが、これまでとは異なる会社のあり方をつくっていくきっかけにしたかったわけです。その後2021年には、ビジネスエコシステムの概念をさらに拡張させた「デジタルコモンズ」を提唱するとともに、「先⾒性と洞察⼒でテクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出します」というパーパスを策定しました。

Mr. Akiyoshi Hiraoka, Advisor, BIPROGY Corporation
1980年に早稲田大学理工学部を卒業。 同年、日本ユニバック株式会社(旧・日本ユニシス株式会社、現・BIPROGY株式会社)に入社。2016年4月に代表取締役社長に就任し、新たな概念として「ビジネスエコシステム」や「デジタルコモンズ」を提唱すると共に、日本ユニシスからBIPROGYへの商号変更を含むコーポレートブランドの刷新を牽引するなど、社会全体がデジタルへと大きく舵を切る変化の時代において、常に未来を見据えた取り組みを展開。2024年3月に代表取締役社長を退任、同年6月に顧問に就任し現在に至る。2025年7月より株式会社リバネスノームズ取締役。 https://www.biprogy.com/
藏本 そして2022年に「日本ユニシス」から「BIPROGY」へと商号を変更されたわけですね。一般的にはこの商号変更こそがブランディングだと捉えられると思うのですが、今の話の中では特に言及がありませんでした。平岡さんにとっては、商号変更はどのような意味があったのでしょうか。

株式会社リバネスノームズ 取締役 藏本斉幸
東北大学文学部卒業。PR会社にて編集・ライティング・広告制作等の業務に携わった後に、株式会社MANNを設立。2021年よりリバネスグループに参画し、2025年に株式会社リバネスノームズへと商号変更。社会の価値観が経済成長から課題解決へとシフトする時代を見据え、「組織の規範をつくり、地球貢献型企業の成長を加速する」をミッションに掲げて、大手事業会社の新規プロジェクトや中堅・中小・ベンチャー企業のブランディング事業を展開。また、丸幸弘著『知識製造業の新時代』の書籍編集などを通じて、リバネスグループにおける独自概念の言語化にも取り組んでいる。 https://n.lne.st/
平岡 そうですね。もちろん商号の変更は大きな出来事ですが、ただ変えるだけでは意味がありません。事前にしっかりインターナルブランディングを推進し、社員の人たちに腹落ちするタイミングで変更してこそ、その後につながるという考えでした。つまり専務時代から10年以上にわたって、新たな概念の提唱やそれに合わせた組織改編を行い、社員、そして取引先も含めて、少しずつ行動変容を促すための仕掛けを続けてきたことこそがブランディングの本質だと思います。
参考記事:「過去と現在と未来をむすぶ文脈を紡ぎ、組織の進化をめざすコーポレートブランディングの挑戦」
https://terasu.biprogy.com/article/feature-envision01/
ブランディングは「らしさ」の再定義と具現化する全社変革型の動きであり、将来への投資
藏本 2人の経営トップによる持続的な実践を踏まえたうえで、ここからはブランディングのプロであるエンビジョンの藤巻さんに「ブランディングとは一体何なのか?」という考え方の共有をお願いします。
藤巻 様々なブランディングの捉え方があるという前提でお話しいたします。一般的には、ブランディングといえば、テレビCMやキャンペーンなどで商品を宣伝するようなB2Cのマーケティングドリブンなものがイメージされがちです。もちろんそういったアプローチも目的に合致していれば、価値はあります。私たちエンビジョンとしては、もう少し広義に捉えています。成熟社会であり課題先進国である日本において、少しでも世の中が良くなっていくような社会変革につながるブランディングに注力したいと考えています。より具体的には、日本の産業を支えている多くの中堅・中小企業のB2Bに携わる経営者やリーダーの皆さんと連携しながら、そうした皆さんがつながっている地域社会、そしてさらにその先のグローバル市場も視野に入れつつ、経営視点でのブランディングをお手伝いさせていただいています。
こうした背景や想いから、私たちは、ブランディングを「変化を見越して、ありたい姿や志を再定義し、事業や組織の枠を超えて、『次の時代に向け成長していくためのらしい全社変革活動』」と定義しています。この観点でいえば、先ほどの小橋さんと平岡さんのお話は、まさにブランディングだと捉えています。過去の歴史の中で、その企業=ブランドの固有の「らしさ」の鉱脈を見出し、それらと時代の変化に合わせて自社固有の価値やDNAを再定義する。そして、それを起点に各部門の事業活動や組織体制として具現化していく。マーケティングや広告といったエクスターナルなコミュニケーションだけでなく、研究開発、生産、製造、マーケティング、人事、知財などすべての部門が「独自の存在意義(=らしさ)を再定義し、社会に価値を出していこう」とベクトルを合わせ、ともに行動していく。その一連の全社変革型の動きこそがブランディング=経営そのものと捉えています。ゆえに、一過性のコストではなく、将来への投資ということになりますね。

small bridge つまり、組織としての一貫性を徹底することがブランディングだということでしょうか。例えば「コンプライアンス」のあり方をとってみても、その企業のDNAや組織風土が浸透していて、結果的に社員の行動が変わっていくというような。
藤巻 おっしゃる通りかと思います。コンプライアンスの大前提として法的に正しいことは当然ですが、「地球を耕す」という理念を掲げるKOBASHIグループとしてコンプライアンスが果たすべき役割は何だろうかと紐解いていくことで、「KOBASHIらしいコンプライアンス」がつくられるはずです。このように「どの部門であっても自分たちの会社のブランドを考えていこう」というのが、私たちが目指すブランディングのスタンスです。
平岡 経営そのものに直結する考え方ですね。BIPROGYでいえば「先⾒性と洞察⼒でテクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出します」というパーパスを掲げていますが、そのパーパスが実際の事業戦略ときちんとリンクしていなければ意味がありません。そこがつながっていることで、社員と組織の行動変容につながっていくわけですから。
藤巻 コーポレートブランディングとは「自分たちは何者か」ということの経営の探究であり、変化に適応しながら進化し続け、未来社会における価値創出そのものと捉えられますね。また例えば、新規事業や新製品/新サービスが、経営の方向性やブランディングの考え方とどのように接続しているか、一貫性ある「らしさ」に基づいて意思決定しているか、はとても重要です。また働く社員の思考や行動がどう整合しているか、自律的に動いているか、そしてカルチャーとして組織内に定着しているのか。つまり、まずは社内/社員起点によって活動が動き出し、エクスターナルな発信(主にクリエイティブのチカラによって言語化・可視化される)へと繋がっていきます。そこまで一体化させないと、結局のところ単発の施策になってしまいます。そこがブランディングの難しいところであり、同時に極めて重要なポイントだと考えています。

藤巻 上記観点からは、ブランディングの対象は、すべての事業領域ということになりますね。つまり、コーポレート領域、事業・製品/サービス領域、組織・人事領域、また中堅中小企業では事業再生や事業承継の領域も含まれます。

経営理念である「地球を耕す」という覚悟と、組織への浸透の難しさ
藏本 小橋さんは2019年に「地球を耕す」という大胆な経営理念を掲げたわけですが、この言葉はどのようにつくられたのでしょうか。例えば、誰かに相談はしましたか。
small bridge いえ、誰にも相談せず一人で決めました。2016年に社長に就任した時、父親から「これから私は何も口出しをしない。全部自分で決めなさい」と言ってもらい、歴史を引き継ぎました。その時に強く思ったのは、父親が会社を大きくして私につないでくれたように、私もより会社を大きくして次の世代につなぎたい、ということでした。しかし、現実問題として日本の農業機械の市場は確実にシュリンクしていて、「農家の手作業を機械に置き換える」だけで会社を大きくすることは今後は難しい。であれば、世界に行くしかありません。世界に行くための経営理念として、「地球を耕す」という言葉は必ず社員に伝わるはずだと思いました。
藏本 それだけ確信できるものだったのですね。
small bridge はい。「このためなら、自分の人生の全てを賭けてもいい」と思えるものでした。しかも、頭に浮かんですぐに発表したわけではありません。自分の中で3年間温めて、それでも揺らぐことがなかったので正式に発表したわけです。ところが、実際にはそう簡単ではありませんでした。全社員を集めた場で私の思いを懸命に伝えたのですが、大部分の社員の反応は「ちょっとよくわかりません」というものでした。一方で、このパネルセッションのような場で社外の方に「地球を耕す」の話をすると、非常に評判がいいんです。「一体、どちらの反応が本当なんだろうか」とずっと悩み続けてきたというのが率直なところです。
平岡 その悩みは私もよくわかります。組織に理念を浸透させるというのは、本当に大変なことですから。こればかりは愚直に、あの手この手で伝え続けるしかありません。同じ内容を伝えるにしても、言い方を変えてみたり、あるいは説明に使うビジュアルを変えてみたり。ただそれも、あまりしつこすぎると「また言ってるよ」と嫌がられてしまいますから、そこは広報のチームが工夫をして社員同士のワークショップをやってくれたり、その様子をグラフィックレコーディングしたものを社内のイントラに上げてくれたりということもありました。そうやって見える化、見せる化を続けることで、徐々に浸透していったように思います。
藤巻 トップの目線と社員の目線でギャップが生じてしまうのは、ある意味、仕方のないことでもあります。やはり立場が違えば視座が変わってきますから。もちろん、外部環境の変化などによって、未来への危機意識を正しくお伝えすることは必要ではあるのですが、理念や志を社内浸透させる際に重要となるのは、ただ単に新しい理念を打ち出すのではなく、きちんと過去、つまり歴史の文脈を紐解いて、既存・新規事業に接続させ、組織を変革していくということです。つまりこれから目指す未来と現在、そして過去と関連性のあるものとしてつながるように編集してあげなければならない。「私たちの新たな役割と存在意義」について、まさに小橋さんがおっしゃっていたように「再定義」することによって、社員の理解を促していく必要があるのだと思います。
平岡 確かにそうですね。社内浸透のための別の仕掛けとしては、日本ユニシス時代に「Foresight in sight」というコーポレートメッセージを策定した時に、既存の全ての事業を「Foresight」を実現するためのものとして位置付ける図解フォーマットをつくったりもしました。また、同時に組織も再編しました。人間は基本的に変化を嫌う生き物ですから、新しい動きには抵抗感があって当たり前なんです。だったら「変わることが当たり前」の環境をつくってしまえということで、普通は年に1回の組織変更を、年に何度も少しずつ変えるということをやりました。社員からは「混乱が大きすぎる」と言われましたが、2年も続けば慣れてくるものです。今振り返れば強引なことをしましたが、結果的には正解だったと思います。
理念や志を具現化する社員の行動を生みだす「成功体験づくり」と「評価との連動」
藏本 理念や志を浸透させるための具体的なプロセスがどんどん出てきますね。小橋さんはいかがですか。
small bridge 我々も色々と工夫をしているところです。特に注力しているのは、KOBASHIの行動指針を策定し、全社員でこれを徹底するということで、その中でも核として位置付けているのが「真摯さ」です。KOBASHIの社員はモノづくりの現場ではもちろんのこと、それ以外の場面でも常に真摯であってほしい。例えば、上司には報告しづらいことであっても、真摯に事実を伝えるべきであって、嘘をついたり話を盛ったりしてはいけませんよね。また、外部パートナーとの交渉においても、「1円でも安く」といった姿勢ではなく、相手に敬意をもって真摯に向き合って欲しい。あらゆる場面で真摯さを貫くことが、モノづくりで生きてきたKOBASHIのコアなコンピタンスであり、115年の歴史で積み上げてきたものだと理解しています。すべての根底に真摯さがあるからこそ、世界に評価され、結果的に「地球を耕す」という理念の実現につながるのだという考えです。
藤巻 今のお話は企業理念や志を具現化する上で非常に重要なポイントだと思います。まず、「らしい」行動指針を策定し、社員の皆さんに行動指針に沿った「らしい」行動を実践いただけるかどうか。次に、その行動がお客様から評価されるという「クイックウィン(小さな成功体験)」につながるかどうか。これがあることによって、「新しい理念や志は信じることができる」という実感が生まれます。そして、理念がきちんと定着するかどうかを左右するのが「人事評価制度」との連動です。つまり行動してビジョンを具現化した結果が、個人の評価に適切に反映されるかどうか。ここが抜けてしまうと「やったところで・・・」となってしまい、最終的に定着するところまでは至りません。ただ、短期的な実績づくりと中長期視点での視座に基づく行動、この両立は決して簡単ではありませんね。

平岡 重要な点ですね。実際のところ、行動変容を評価につなげるのは非常に難しいんです。というのも、評価はどうしてもビジネスの成果を見てしまいがちなのですが、「行動変容の結果」と「現状のビジネス」は時間軸が違いますから。評価だけを高めようとすれば、「行動変容しない」が正解になってしまいます。
small bridge確かに、そうなります。
平岡 そこで私は人事制度を見直して、上司の評価項目に「部下にチャレンジさせているか」というものを追加しました。成果の有無に関わらず、チャレンジをさせているか、チャレンジを認めているか。社員に新しいチャレンジをしてもらうためには、失敗を責めてはいけないからです。
藏本 失敗を責められると萎縮してしまいますね。
平岡 当時私が繰り返し言っていたのは「成功のKPIは失敗の数である」ということです。「日本ユニシスで最も失敗しているのは私だ。たくさん失敗したら社長になれるぞ」と(笑)。この言葉を流行らせながら、チャレンジさせているか、という評価項目を浸透させていきました。
small bridge それはめちゃくちゃいいですね。ものすごくかっこいい。非常に参考になります。
藤巻 素晴らしい感度とリーダシップですね。人事部をどう理念や志起点で巻き込んでいけるかも鍵となりますね。
経営トップの矜持が、今あるアセットを未来へと転換していく
藏本 そろそろ締めくくりの時間です。最後に一言ずつメッセージをお願いいたします。
small bridge 2019年に「地球を耕す」という壮大なテーマを掲げましたが、引き続き愚直にやっていこうと改めて思いました。やり続けることが真摯さでもありますし、そういうトップの姿を見せることで、社員にも挑戦を促していければと思っています。
平岡 組織のトップであれば、誰もが時代の流れを見ながら「変えていかなければ」と考えているはずです。小橋さんのように歴史ある企業のトップであれば尚更でしょう。変えるためには覚悟が必要で、これはなかなか大変なものですが、勇気を持って最初の一歩を踏み出すことができれば組織を動かすきっかけが必ず見えてきます。私の経験してきたことが、そうした皆さんのお役に少しでも役に立てば幸いです。
藤巻 皆さんの会社には、未来につながる可能性のある「らしさ」の鉱脈が必ずあるはずです。社会の情勢やグローバルの流れを見ながら、今あるアセットをどう未来へと転換していけるか。経営トップの矜持がその起点と考えています。その転換の先に、この場に集まった中堅・中小企業、スタートアップの皆さんを中心に、そして大企業や金融機関などそれぞれが持つ知識がつながって広範なネットワークに拡大(=共鳴の環)していくことで、新たな価値や意味が生まれ、徐々に遠心力となって社会に伝播していきます。日本全体が盛り上がり、明るい未来が実現すると信じています。このセッションで議論されたブランディングのアプローチを、その一つのヒントとして活用いただければ嬉しいです。

藏本 皆さん、本日はありがとうございました!