発起人の想い

FOUNDERS

株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO 丸 幸弘

リバネスの社名は英語で「 Leave a Nest 」、つまり「巣立つ」という意味です。私たちは2002年の設立当時からずっと、大学の中に眠っている知識を掘り起こして社会へと巣立たせることを続けてきました。大学発の研究開発型ベンチャーを数多く支援してきたわけです。

記念すべき第一号が株式会社ユーグレナです。ユーグレナ社の面白さは、その成長プロセスにあります。アカデミアのさまざまな知識を取り込み、地域の中小企業と組み、大企業と、また金融機関と組むことによって、ユーグレナ社は2012年に東証マザーズに上場し、2014年には大学発ベンチャーとして日本初の東証一部(現プライム市場)上場を果たしました。

日本で眠ったままになっているのは、大学の知識だけではありません。これまで日本を支えてきた中堅企業・中小企業もまた、「下請け」という構造によって、ある意味では埋もれた状態になってきました。その重要性に気づかせてくれたのが、岡山の農業機械メーカーであるKOBASHI HOLDINGS株式会社の小橋正次郎氏です。

彼は私にこう言いました。「地域に眠っている中小企業の熱をどうして使わないんですか。中小とベンチャーをつなぐ仕組みを一緒につくりませんか」。その通りです。今の日本に足りないのは、中堅企業・中小企業とベンチャー企業をつなぐことによって世界を変えていく仕組みです。私はそのことを小橋氏から学びました。

全国知識製造業会議の構想はこうして数年前にスタートし、さらに株式会社みずほ銀行という強力なパートナーを得て、記念すべき第一回の開催へと至りました。さあ皆さん、お互いの知識とアセットを組み合わせて、新たな知識をつくりだしましょう。その知識で世界の課題を解決していきましょう。そして「自分たちはこんな世界を描いていくんだ」というベクトルをもちましょう。この場から、世界を変える新たな知識が数多く巣立っていくことを私は確信しています。


株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充 氏

株式会社ユーグレナは私の個人的な想いから出発した会社です。大学一年の夏にバングラデシュに行き、現地の子ども達が栄養失調に苦しむ姿を見て、「なんとか元気になってもらいたい」「栄養価の高い食料をここに届けたい」と心に決めたことから全てが始まりました。

その突破口として取り組んだのが、実に59種類もの栄養素を含む「微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」の食用屋外大量培養です。しかし、当時の私たちはまだ立ち上がったばかりの大学発スタートアップです。研究成果はあっても、それを大規模に培養するための実証フィールドがありません。そんな私たちに手を差し伸べてくれたのが、沖縄県の石垣島を拠点とするクロレラ製造の大手である八重山殖産株式会社でした。

地域を代表する企業が長年培ってきた技術とノウハウを私たちの知識と組み合わせることによって、2005年12月16日、世界初となるユーグレナの食用屋外大量培養が成功しました。それから9年後の2014年12月3日に、株式会社ユーグレナは東京大学発スタートアップとして初めて東証一部(現プライム市場)上場を果たしました。そして現在では、バングラデシュの小学校で、毎日およそ1万人の子ども達にユーグレナ入りクッキーを配布することができています。

今の社会に残されている課題は、どれも複雑なものばかりです。既存の方法で解決できるなら、誰かがとっくに解決しているはずです。こうした課題に取り組むためには、異なる領域の知識を組み合わせる知識製造業が絶対に必要です。

その起爆剤となるのがスタートアップです。そしてスタートアップを技術とノウハウで支えることができるのが中堅企業・中小企業です。両者が手を組み、一緒になってイノベーションを推進することこそが、日本が進むべき道ではないでしょうか。私たちユーグレナ社は全国知識製造業の発起人として、日本全国のスタートアップの範となるべく、これからも課題解決に全力で取り組んでまいります。


KOBASHI HOLDINGS株式会社
代表取締役社長 小橋 正次郎 氏

我々は1910年に岡山県で創業した農業機械メーカーです。100年以上の歴史があり、幸いにも長く成長を続けてきましたが、同時に私には「このままでは次の世代に引き継ぐことができないのではないか」という強い危機感がありました。国内農業の衰退に歯止めがかからないからです。

当社の新規事業を探索する過程で、10年以上前に株式会社ユーグレナの代表である出雲充氏にお会いしました。当時ユーグレナは未上場でしたが、出雲氏は「ミドリムシで世界を救う」という自らの夢を実現するために、圧倒的な情熱で突き進んでいました。一方で、KOBASHIには代々引き継がれてきた資産があるものの、会社として斬新な挑戦ができていませんでした。その事実に気付かされ、奮起したことを今でもはっきりと覚えています。

それから数年後、私は株式会社リバネスの代表である丸幸弘氏に出会いました。当時のリバネスはテックプランターという新たな取り組みによってスタートアップと大企業をつなぎ、大きな成果を出し始めていました。それはとても素晴らしいことです。一方で、地方の中堅中小企業がその輪に加わっていないことが非常に悔しく、思わず丸氏にこう言いました。
「日本の会社の99.7%は中小企業です。中小企業にこそイノベーションは必要で、スタートアップと相性がいいはずです。そうしないと日本は決して良くならないのではないですか」。丸氏はそんな私の言葉を真摯に受け止め、すぐに地域版のテックプランターを始めてくださいました。

全国知識製造業会議は、こうした経緯の末に立ち上がりました。一朝一夕に始まったものではありません。さまざまな当事者が、それぞれの持ち場で新たな取り組みを始めた結果として生まれた動きなのです。そうした一つ一つの想いを途切れさせることなく、全員で日本を再興していきたい。全国知識製造業会議は、そのための場だと私は考えています。


株式会社みずほ銀行
執行役員 リテール・事業法人部門副部門長 金田 真人 氏

もう一度日本を元気にしたい。もう一度日本を強くしたい。みずほ銀行にはその強い想いがあります。では、日本再興を担うのは誰なのか。それは、きらりと光る技術を持つ日本全国の中堅企業・中小企業です。そして、新たなテクノロジーを生み出し、ビジネスとして社会実装を進めているディープテックスタートアップです。私たちは、こうした方々を全力でサポートさせていただきたいと考えています。

みずほ銀行には、そのためのアセットが大きく3つあります。1つめは、スタートアップの成長支援に早くから取り組み、日本でトップのポジションにあるということ。2つめは、47都道府県の全てに展開している唯一のメガバンクであるということ。3つめは、グローバルでも日系企業等の進出支援実績が豊富であり、同時に東南アジアでは現地の大企業とも強固なネットワークを構築していることです。これらのアセットを掛け合わせて活用することで、みずほ銀行は日本全国の中堅・中小企業とディープテックスタートアップ双方の成長支援を行い、日本からグローバル企業を輩出することを目指しています。

しかし、これは私たちだけで実現できることではありません。ディープテックスタートアップのテクノロジーの根幹となる研究開発に対して、独力でキャッチアップし続けることは困難です。また、中堅企業・中小企業が活躍している製造業についても、その新たなサプライチェーンやバリューチェーンの構築を私たちだけでリードしていくことは現実的ではありません。

つまり、みずほ銀行が有するアセットの価値を最大限に発揮するためには、共に未来をつくるパートナーの存在が必要なのです。これこそが、みずほ銀行が全国知識製造業会議の発起人に加わり、記念すべき初開催の場をリバネスと共催することを決断した理由です。私たち自身も知識製造業に身を投じることによって、日本を強く、元気にしていきたい。そう強く願っています。