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エンジニアリングの力で人と地球の未来を灯す〜創業120年の老舗ベンチャーが仕掛ける知識製造業〜【全国知識製造業会議2026 ダイジェスト】

2026.07.31
エンジニアリングの力で人と地球の未来を灯す〜創業120年の老舗ベンチャーが仕掛ける知識製造業〜【全国知識製造業会議2026 ダイジェスト】

株式会社リバネスは、世界の課題解決のため、中堅・中小企業とベンチャーが知識と知識を組み合わせ、新しい知識を作る場として「全国知識製造業会議2026」を2026年3月27日に開催しました。

基調講演の「エンジニアリングの力で人と地球の未来を灯す〜創業120年の老舗ベンチャーが仕掛ける知識製造業〜」では、地域インフラを支えてきた老舗企業でありながら、ディープテックベンチャーとの共創に挑む「株式会社山田商会ホールディング」の代表取締役社長 山田 豊久氏が登壇。エンジニアリングを軸に、自社に蓄積された知識とベンチャーの知識を掛け合わせて社会課題を解決する挑戦の現在地とそこに込められた想いについて力のこもった講演がなされました。本記事では、この講演をダイジェストでお伝えします。

創業120年、名古屋の明かりとともに始まった会社

株式会社山田商会ホールディング 代表取締役社長 山田 豊久氏

山田 豊久 株式会社山田商会ホールディング 代表取締役社長

1979年10月生まれ。東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修了。工学修士。幼いころからエネルギー問題に関心が強く、学生時代は燃料電池や燃焼について研究。2004年ガス工事の株式会社山田商会に入社。2020年5月代表取締役社長、2022年5月より株式会社山田商会ホールディング代表取締役社長を兼務。エンジニアリングの力で、エネルギー・インフラ・農林水産・住環境の4分野についてレジリエンスの向上を目指す。

 

私たちの会社は、一言で言うとガスや水道の工事をしている会社です。山田商会の創業は1906年で、今年で120年になります。名古屋では1906年に東邦ガスの前身である名古屋ガスが創業しました。そのとき、工事の担い手として声がかかったのが当社の創業者です。つまり私たちは、名古屋でガスの明かりが灯り始めた、その最初の仕事とともに生まれた会社です。私はその5世代目の後継ぎです。会社をやっている家に生まれて、小さい頃から将来後を継ぐと言われて育ちました。私自身も、小学生くらいからこれ一本でやると決めて、それに関係する分野を学んで会社に戻ってきました。

現在、私たちが行っている仕事は、道路の下に埋まっているガス管の工事や、建物内のガス配管工事をはじめ、その隣接である水道、電気、それから通信と、およそ暮らしに必要なインフラの工事をほとんどカバーしています。そのような中で、「人と地球のレジリエンスを灯す」ということを目指しています。「灯す」という言葉には、危険の前に明かりを灯して安全を確保すること、そして行く先を照らすこと、そういう意味を込めています。これからは、人と地球の未来に対して、そのレジリエンスを灯す仕事をしていきたいと思っているのです。

インフラを自分たちの手で支える会社

山田商会のガス・水道工事の現場

この時代、配管や配線の仕事を外注化する会社も多いのですが、私たちはむしろ逆で、自分たちで社員を抱え続けてきました。仕事が少ない時期は固定費が重く、正直とても苦しいです。それでも歯を食いしばって人を抱え、その分、技術を磨き、新しいことにも挑戦できる体制を維持してきました。250名ほどの社員で、東海3県で毎日200か所の現場を動かしています。こうしてインフラを支えてきた私たちは、災害時には復旧にも向かいます。伊勢湾台風、阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして近年の豪雨災害。ガスが止まっている地域に行き、復旧の応援をしてきました。また、給湯・暖房・断熱といった住環境の面から、人々の健康にも関わっています。

こうした仕事をしていく中で、私は強い課題感を持つようになりました。まずは人手不足です。私たちは現場で手を動かしてこその仕事ですので、この先、今まで通りのペースで続けていけるのかという不安があります。また、カーボンニュートラルや自然環境といった課題も深刻になっています。地域だけでなく、私たちが関心を持ち始めている東南アジアでも同じです。まさに、地球全体のレジリエンスが揺らいでいると感じています。

ただ、課題が見えていても、私たちには新しいテクノロジーを取り入れてビジネスにするノウハウがありませんでした。ピッチイベントなどで技術を持った会社と出会っても、それをどうやって事業にするのかが分からなかったのです。

ベンチャーとの連携で「知識製造業」へシフトする

全国知識製造業会議2026で講演する山田 豊久氏

そんなときに出会ったのがリバネス、そして「知識製造業」の概念でした。リバネスは国内外の研究開発型ベンチャーとのつながりが深く、地域で汗をかいて動いている人たちだなと思いました。リバネス、そしてテクノロジーをもったベンチャーと共に新しい事業をつくっていこうと考え、今2年半ほど一緒に取り組んでいます。

私たちには、長年の経験と地域の地盤、そして手を動かしてくれる人材があります。一方で、ベンチャー企業の皆さんには、独自の技術やパッション、スピードがあります。こうしたものを掛け合わせて、新しい知識をつくっていく。つまり、私たち自身が知識製造業へ転換していこうとしています。

その取り組みの中で、いくつか具体的な事例が生まれてきています。

まずエネルギー分野では、株式会社Helical Fusionと一緒に取り組んでいます。岐阜県土岐市で建設が進む実験施設では、高温と低温が近接するような極端な環境の中で、非常に高い強度の溶接が求められます。私たちは、都市ガスのような微細な分子が漏れないように施工してきた溶接技術を持っています。その技術が、この新しいエネルギーの現場でも生かせるのではないかと考えています。

次に、株式会社ナチュラニクスとは、蓄電池を搭載した電動バイクの分野で協力しています。たった3分で充電できる技術を、現在タイで実証されていますが、こうした技術が社会に実装されていくには、設備の設置やメンテナンスを担う人材が不可欠です。私たちは、まさにその現場を担う存在として、どのように関われるかを考え、MOUを交わしました。

インフラ分野では、ドローンの会社とも取り組んでいます。株式会社Liberawareの小型ドローンは、人が入りにくい危険で暗く狭い場所の点検に使われます。こうした技術も、現場に入って運用し、壊れたら直し、データを扱う人材がいなければ広がりません。私たちは、現場に近い立場として、その運用を担うことができると考えています。

さらに、株式会社テラ・ラボのように、長距離を飛行するドローンで災害時の状況を把握する技術もあります。ただ、災害は頻繁に起こるものではありません。だからこそ、平時から使われる形をつくり、有事につながる運用をどう設計するか。そうした視点で一緒に取り組んでいます。

農林水産分野では、株式会社ARKの陸上養殖システムを、実際に自社の敷地に設置してエビの養殖を行いました。実際に使ってみることで、「ここはこうした方がいい」「こう運用した方がいい」といった具体的な課題が見えてきます。そうしたユーザーとしての視点をフィードバックしながら、技術の改良に関わっています。

東南アジアとの橋渡しも、中小企業の役割になる

人と地球のレジリエンスを灯すと題した講演スライド

海外への展開にも力を入れています。ベンチャーとつくっていく事業が東南アジアの社会課題解決にどのように繋がっていくのか、私自身も実際に海外に行って現地の課題の現場を見ていっています。この1月から3月にかけて、私はベトナムのホーチミン、ハノイ、フィリピンのマニラにも行ってきました。2020年に立ち上げたベトナム法人も通じて、いろいろなご縁ができるなかで、日本で積み重ねてきた仕事の経験を、今度はベトナムでも展開しています。

現地にも技術を持った会社がたくさんあることが分かってきました。そうした東南アジアの会社が日本で展開したいと考えたとき、名古屋なら私たち、岡山ならKOBASHI HOLDINGS、岐阜なら長谷虎紡績、秋田なら能代電設というように、それぞれの地域でスピード感を持って受け止めることができるのではないかと思っています。さらに、そういった中堅・中小企業の連合体が広がれば、また別の会社が日本に来たり、他のアジアへ展開したりするような場面でも、私たちが手伝えるかもしれない。そんなことを考えています。

大企業の皆さんが頑張っておられるからこそ、私たち中小企業があります。一方で、中小企業だからできること、得意なことがあると思います。だからこそ、一緒に仕事をしていきたいと思っています。東南アジアとの架け橋も、そうした協力の中でつくっていけたらと思っています。

最後に、私たちは「人と地球のレジリエンスを灯す」という言葉を、これからの仕事の中心に据えています。

長年培ってきた技術には重みがあります。その技術によって、この地域で、そして世界のさまざまな地域で、新しいレジリエンスの実現につなげていきたい。ともに実現していきましょう。